数学 ことはじめ

はじめに

このコラム、純粋な数学というよりはより実用的な数学を好きになることを目標としているので、かなり砕けた説明をします。もっと厳密な意味を学びたいよという方は、まずこのコラムでイメージを深めてもらい、そこからより詳しいサイトや書籍で調べてもらうという学び方をしていだけるとよいと考えます。

数学って何か難しい
こう言って数学が嫌いになってしまう人は少なくないと思います。
かくいう私も高校まで数学は得意だったのですが、大学に入ってからギャップに悩まされて挫折してしまった人間の一人です。私は大学で電気電子工学を専攻しているので、純粋な数学にどっぷりと浸かるという経験は少ないのですが、それでもやはり数学は工学系の学問を学ぶ上でとても重要なので関わらないという訳にはいきません。工学という分野に関りを持つ以上、これから長い未来、数学という苦手と向き合わあければならない。これはとても大変なことです。人は苦手や嫌いを意識してしまうと中々そこから脱することができない。それでも何か苦手を克服する為に良い方法はないかと考えこのコラムを書くことに決めました。未熟な私の書くコラムですが、これが私と同じ悩みを抱えている人の助けに少しでもなれば良いなとも考えています。少々長くなりましたが、ぜひこのコラムを通して一緒に学んでいきましょう。いつか未来で数学「苦手」が「なんか好き」になって、「分かる」になることを信じて…

第一回 「定義」「定理」「公式」

数学を好きになるための第一歩としていくつか知っておくべきポイント。その一つが「定義」「定理」「公式」の意味の確認だと感じます。これは私の経験則になるのですが知っているのと知っていないのとでは本を読んだり話を聞いたりするときの理解の深さが違ってくるようにも思われます。いわゆる理系の学問、特に数学では「定義」「定理」「公式」という三つの言葉がよく登場します。皆さんの中にも受験勉強やテスト勉強でこれらの言葉を見かけたけれども、意味が分からないし、時間もないからとにかく全部暗記してしまおうというやり方で勉強を乗り越えてきたという方もいるかもしれません。実際、ある程度勘の良い人はこのような認識でも簡単な問題は解けてしまいます。しかし、これが大きな落とし穴で「定義」「定理」「公式」の三つが区別できていないと、少し厳密な数学になっただけで自分の力が通用しなくなる話が理解できていないことに気が付き始めます。

さっそく3つの意味を確認してみましょう。今回このコラムでは3つを「サッカー」を例にい考えていきたいと思います。

定義 もっとも絶対的なルール
「定義」は紹介する3つの言葉の中で一番漢字が難しいので、身構える方も多いと思いますが、上に示した通り3つの中で一番シンプルに説明できます。「絶対的なルール」というと難しく感じてしまうかもしれませんが、これは「破ることができない」だったり「当たり前、常識」といった風に解釈していただくと良いと思います。例えば「サッカー」は「ボールを蹴るスポーツ」ですよね?このように「定義」はその世界で逆らうことのできない絶対的なルールを示しています。数学に話を戻しましょう。「定義」は「絶対的なルール」です。「数学」で「絶対的、当たり前なルール」には何があるでしょうか?一つは「+」の記号です。皆さんはこの記号読めますか?なに馬鹿な質問をしているんだという方もいらっしゃるとおりますが、それが「定義」を理解しているということなのです。つまり「+」は「プラス、正の符号」であることは当たり前。「定義」がでてきたらここから先の議論ではそれが「当たり前になるんだ」という感覚を覚えておいてください。

定理 定義をもとに作られたルール
「定理」から少し説明が難しくなります。先ほど紹介した「定義」は「絶対的なルール」でしたよね。これを元に作られたルールが「定理」だと解釈してください。ちょっと意味が分からないという方のためにサッカーで例えましょう。先ほど「サッカーはボールを蹴るスポーツ」と定義されました。これを元に次のルールを考えるとしたら「サッカーで手を使ったらハンドという反則になる」とルールが追加されるでしょう。また、サッカーは「相手陣地のゴールにボールを入れるスポーツ」と定義されれば、「相手のゴールにボールを入れたとき自身は1点を獲得する」という定理ができます。定義を元に定理を作るという感覚はこのようなものです。そして、定理は定義を用いることで「証明」できます。「サッカーで手を使ったらハンドという反則になる」という定理が成り立つのは「サッカーはボールを蹴るスポーツ」という定義があるからです。

公式 定理をもとに作られた戦略のようなもの
「公式」をざっと説明すると「戦略のようなもの」。「~ようなもの」とあいまいな表現をするのは厳密「戦略」と断定してしまうと不都合が生じてしまうから。しかし、このコラムでは厳密性は無視することにしているので、その点を深く掘り下げることはしません。「戦略のようなもの」というイメージだけ覚えておいてください。サッカーに例えてみましょう。ここまで見てきた通り、サッカーは「ボールを蹴るスポーツ」、「相手のゴールにボールを入れるスポーツ」と定義されました。これらの定義を元に「サッカーは手を使ったらハンドになる」、「相手のゴールに点を入れることで一点を獲得する」と定理を作られました。これよりサッカーは「ボールを蹴りながら、点を獲得していくゲーム」となります。さて、皆さんご存じの通りゲームを効率よく進めるには「戦略」が必須です。「選手の配置、動き方」、「効率の良いパス回し」などサッカーというゲームが発展していく中で、さまざまな「戦略」が生まれました。この「戦略」こそが「公式」なのです。数学もサッカーと同じように「問題を解くためのより簡単な方法」が考えられ、その歴史の中で「戦略」が生まれました。もちろんその「戦略」はルールに従っていなければなりません。「サッカーで手を使ってはいけない」というルールがあるのに「戦略」で「よし!3番の選手はボールを持って前に全力で走れ」ということを許すわけにはいきませんからね。そういったわけで「公式」とい「戦略」は「定理」に基づいていなければならないのです。

さて、ここまで長々と語ってきましたが、「定義」「定理」「公式」のイメージの区別がつけていただけたでしょうか?もうお分かりかもしれませんがこの3つの中で最も重要なものは「定義」です。「数学」に関した有名な本の一つ「How to solve It(いかにして問題をとくか)」という本の中には迷ったら「定義にかえれ」と書かれているぐらい重要なものとなります。それを踏まえたうえで「定義」「定理」「公式」の区別をつけておく。これが「数学」という「ゲーム」を攻略する第一歩となります。余談になりますが「ストリートファイター」などの大会で有名なプロゲーマー梅原大吾さんは、彼の著書「1日ひとつだけ、強くなる。」の中で「ポイントを押さえた人間が勝つ」と言っておりました。どんなに強い選手でも「設定されたルールとポイントの違う場所を強化すれば負ける」これは数学に限らず「学問」の世界にも当てはまると思います。最も学問に勝ち負けはありませんが、抑えるべきポイント(数学であれば「定義」「定理」「公式」の区別をつけておくことがそのうちの一つと言えるでしょう)を押さえておくことで学びをより深いところまで進められる。少なくとも私はそう考えます。「どこがポイントになるかを見抜く」もしかすると、これこそが「数学」という学びのゲームの「公式」なのかもしれませんね。

2024/4/9

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